IFRSと米国基準(US GAAP)の違い
LIFO・リース・のれんなど、主要論点を整理
IFRSと米国基準(US GAAP)は、どちらも世界の資本市場で使われる主要な会計基準です。設計思想から個別論点まで、初学者・実務家が押さえるべき代表的な違いを整理します。
設計思想:原則主義 vs 細則主義
最も根本的な違いは、基準の作り方の思想です。IFRSは目的や原則を示して判断を重視する「原則主義」の色彩が強く、US GAAPは具体的なルールや数値基準を細かく定める「細則主義(ルールベース)」の傾向があります。
両者は長年コンバージェンス(収斂)を進め、収益認識(IFRS 15/ASC 606)などでは大きく歩み寄りました。一方で、以下に挙げるように、実務に影響する重要な差異が今も残っています。
差異を丸暗記するのではなく、「原則で考えるIFRS」「ルールで定めるUS GAAP」という発想の違いを軸にすると、個別論点がつながって理解できます。
棚卸資産とLIFO(最も有名な違い)
棚卸資産の評価方法は、IFRSとUS GAAPの違いとして最もよく知られています。後入先出法(LIFO)の可否が分かれ目です。
LIFO(後入先出法)が認められます。税務との連動もあり、実務で採用する企業があります。
LIFOは禁止。先入先出法(FIFO)または加重平均法を用います。
物価上昇局面では、LIFOは新しい(高い)原価から費用化するため、利益と在庫評価額が小さくなりやすい傾向があります。US GAAPからIFRSへ移行する際、LIFOの廃止は利益や税負担に影響し得る重要な論点です。
リース会計:単一モデル vs 二区分モデル
借手のリースは、現在両基準の最も大きな違いの一つとされます。どちらもオンバランス化しますが、損益計算書での見え方が異なります。
ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの二区分。オペレーティング・リースはP/L上、単一の定額リース費用として計上します。
単一モデル。すべてのリースを使用権資産とリース負債で認識し、費用は減価償却費と利息費用に分解します。
IFRS 16では利息費用と減価償却費に分かれるため、リースの多い企業ではEBITDAが改善して見える傾向があります。同じ経済実態でも、指標の見え方が変わる点に注意が必要です。
その他の主要な相違点
のれん・減損・開発費・再評価・金融商品の減損など、実務で確認頻度の高い論点を比較します。
| 比較項目 | 米国基準(US GAAP) | IFRS |
|---|---|---|
| のれんの事後測定 | 規則的な償却は行わず、減損のみ(非公開会社は償却を選択できる例外あり)。減損は報告単位の公正価値との比較で判定します。 | 規則的な償却は行わず、減損のみ。減損はCGUの回収可能価額との比較で判定します。 |
| 減損損失の戻入れ | のれんを含め、すべての資産で戻入れは認められません(保守的)。 | 減損の原因が解消した場合、のれんを除く資産で戻し入れます。 |
| 開発費 | 研究開発費は原則として発生時に費用処理します(内部開発ソフトウェア等を除く)。 | 研究費は費用処理。開発費は所定の要件を満たせば無形資産として資産計上します。 |
| 有形固定資産の測定 | 取得原価を基礎とする「原価モデル」のみです。 | 原価モデルに加え、「再評価モデル」を選択できます。 |
| 金融商品の減損 | CECLモデル。当初認識時から全期間の予想信用損失を見積ります(ステージ区分なし)。 | ECLモデル。信用リスクの状態に応じた3ステージで、12ヶ月または全期間のECLを見積ります。 |
Tetsu先生の視点
「IFRSとUS GAAPは、収益認識やリースのオンバランス化など、大枠では歩み寄りました。それでも、LIFO・減損の戻入れ・再評価・リースの費用パターンなど、利益やEBITDAに効く差は残っています。『原則で考えるIFRS、ルールで定めるUS GAAP』——この視点を持てば、グローバル企業の財務諸表をどちらの言語でも読めるようになります。」
※ このセクションはReiwa Accountingの講師による独自の解説であり、公式機関の見解を示すものではありません。