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IAS 12 Standard

IAS 12 法人所得税と繰延税金
会計と税務のズレを「繰延税金」で橋渡しする

会計上の利益と税務上の課税所得は、同じではありません。そのズレを調整するのが「繰延税金」です。IAS第12号の資産負債法と一時差異の考え方を、計算例と日本基準との比較で整理します。

Section 1

なぜ「繰延税金」が必要なのか

損益計算書に載る「税引前利益」と、税務署に申告する「課税所得」は、認識のタイミングの違いなどからズレが生じます。たとえば、会計では費用にできても、税務では将来まで損金にできない項目があります。

このズレをそのままにすると、利益と税金費用の対応が崩れてしまいます。そこでIAS第12号は、将来解消されるズレ(一時差異)に対して繰延税金資産・負債を計上し、会計上の利益に見合った税金費用を示せるようにします。

Core Idea

繰延税金は「将来の税金の前払い・後払い」を表します。いま会計と税務でズレていても、将来それが解消するときの税効果を、あらかじめ資産・負債として認識しておく考え方です。

Section 2

一時差異の計算(資産負債法)

IAS第12号は「資産負債法」を採用します。資産・負債について、会計上の帳簿価額と税務上の金額(税務基準額)を比べ、その差である「一時差異」に税率を乗じて繰延税金を算定します。

会計上の帳簿価額A
税務上の金額(税務基準額)B
一時差異(A − B)差額
× 適用税率×
繰延税金(資産または負債)=

数値例

ある資産の会計上の帳簿価額が1,000、税務上の金額が600だとします。将来加算一時差異は400。適用税率を30%とすると、繰延税金負債 = 400 × 30% = 120 となります。

測定のポイント

税率は、差異が解消すると見込まれる期に適用される「決定済みまたは実質的に決定した税率」を用います。また、繰延税金は割り引きません(現在価値には割り引かない)。

Section 3

繰延税金「資産」と「負債」

一時差異は、将来の課税所得を増やすか減らすかで、繰延税金負債(DTL)と繰延税金資産(DTA)に分かれます。

一時差異の種類 効果 代表例 計上されるもの
将来加算一時差異 将来の課税所得を増やす差異 会計より税務の減価償却が先に進み、税務上の簿価が会計より小さいケースなど。 繰延税金負債(DTL)
将来減算一時差異 将来の課税所得を減らす差異 賞与引当金や貸倒引当金など、会計では費用計上済みだが税務では将来の損金となるケースなど。 繰延税金資産(DTA)
繰延税金資産(DTA)の回収可能性

繰延税金資産は、将来の課税所得によって回収できる可能性が高い範囲でのみ認識します。将来の利益が十分に見込めない場合、DTAの一部または全部を計上できないことがあります。ここが実務上の重要な判断ポイントです。

Section 4

日本基準(J-GAAP)との比較

税効果会計は、日本基準もIFRSも資産負債法で大きく整合しています。一方で、回収可能性の判断などに実務上の違いがあります。

比較項目 日本基準(J-GAAP) IFRS(IAS 12)
基本的な方法 資産負債法を採用し、会計上の帳簿価額と税務上の金額の差(一時差異)に税率を乗じて算定します。 同じく資産負債法を採用します。この点は日本基準と大きく整合しています。
繰延税金資産の回収可能性 過去の課税所得やスケジューリングをもとにした「企業分類」の指針に沿って、回収可能性を判断します。 将来の課税所得により回収できる可能性が高い(probable)範囲で認識します。日本のような定型的な企業分類はありません。
当初認識の免除 明示的な免除規定は設けられていません。 企業結合ではなく、取引時に会計利益にも課税所得にも影響しない資産・負債の当初認識では、繰延税金を認識しない免除があります。
Expert View

Tetsu先生の視点

「繰延税金でつまずく人の多くは、『利益にかかる税金』と『差異にかかる税効果』を混同しています。まず、資産・負債の“会計簿価と税務簿価の差”という一点に集中してください。そこに税率を掛けるだけで繰延税金は出ます。日本基準と考え方はほぼ同じなので、IAS 12の理解は日本の税効果会計にも直結します。」

※ このセクションはReiwa Accountingの講師による独自の解説であり、公式機関の見解を示すものではありません。

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