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IAS 36 Standard

IAS 36 資産の減損
回収可能価額と減損損失の認識・戻入れ

資産の価値が帳簿価額を下回ったとき、どのように損失を認識するのか。IAS第36号の「回収可能価額」の考え方と、日本基準との違い(判定ステップ・戻入れ)を整理します。

Section 1

減損会計の目的:帳簿価額の「持ちすぎ」を防ぐ

減損会計の目的は、資産を、将来回収が見込まれる金額を超える価額で貸借対照表に計上したままにしないことです。資産の帳簿価額が「回収可能価額」を上回るとき、その資産は減損しているとされ、差額を減損損失として認識します。

対象は、有形固定資産、無形資産、のれんなど幅広い資産です(棚卸資産や金融資産など、他の基準が扱うものは除かれます)。

Core Principle

減損は「取得原価を、回収できる金額まで切り下げる」処理です。いったん認識した後は、原則としてその低い金額を基礎に減価償却を続けます。

最新動向(2026年時点)

IASBは「企業結合—開示、のれん及び減損」プロジェクトで、のれんを含む減損の取扱いを検討しています。減損のみモデルは維持される方向で、使用価値の計算の簡素化やのれんの配分に関する明確化、開示の充実などが議論されています(最終的な決定は2026年後半に見込まれています)。

Section 2

回収可能価額 = 「使用価値」と「公正価値」の高い方

回収可能価額(Recoverable Amount)は、次の2つのうちいずれか高い方です。資産を「使い続ける」場合と「売る」場合の、有利な方を回収額とみなす考え方です。

使用価値(Value in Use)

使い続けて得られる価値

その資産を使用し続けることで生じる将来キャッシュ・フローを見積もり、割引率で現在価値に割り引いた金額です。

FVLCD

売って得られる価値(処分費用控除後)

資産を売却した場合の公正価値から、売却に直接要する費用を差し引いた金額(Fair Value Less Costs of Disposal)です。

資金生成単位(CGU)

資産が単独では独立したキャッシュ・フローを生まない場合、複数の資産をまとめた「資金生成単位(CGU)」の単位で回収可能価額を判定します。のれんは、取得のシナジーが期待されるCGU(またはそのグループ)へ配分してテストします。

Section 3

減損テストの流れ

IFRSの減損は、次の流れで判定します。のれんなど一部の資産は、兆候の有無にかかわらず毎期テストが必要です。

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    Step 1

    減損の兆候を確認する

    各報告日に、資産の価値が損なわれている兆候(市場価値の大幅な下落、事業環境の悪化、資産の陳腐化など)がないかを確認します。

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    Step 2

    回収可能価額を算定する

    兆候がある場合(および毎期テストが必要な資産)は、回収可能価額を見積もります。回収可能価額は「使用価値」と「処分費用控除後の公正価値」のいずれか高い方です。

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    Step 3

    帳簿価額と比較する

    帳簿価額が回収可能価額を上回っていれば、その差額を減損損失として認識し、資産の帳簿価額を回収可能価額まで引き下げます。

CGUでの配分順序

CGU(のれんを含む)で減損が生じた場合、減損損失はまずのれんを減額し、残りを他の資産へ帳簿価額の比率で配分します。

Section 4

減損損失の戻入れ

IFRSでは、過去に減損した資産について、減損の原因となった状況が解消・改善した場合に減損損失を戻し入れます。ただし、戻入れ後の帳簿価額は、「減損しなかった場合の帳簿価額(減価償却後)」を上限とします。

重要な例外として、のれんの減損損失は戻し入れません。いったん認識したのれんの減損は、その後価値が回復しても取り消されない点に注意が必要です。

日本基準

減損損失の戻入れは認められない

IFRS

戻入れあり(のれんを除く/上限は未減損時の帳簿価額)

Section 5

日本基準(J-GAAP)との比較

減損は、判定の「ステップ数」と「戻入れの可否」で日本基準と明確に異なります。

比較項目 日本基準(J-GAAP) IFRS(IAS 36)
判定のステップ 2段階。①割引前の将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回るかで認識を判定 → ②回収可能価額まで減額して測定します。 1段階。帳簿価額と回収可能価額(割引後)を直接比較し、超過分を減損損失とします。
毎期テストが必要な資産 のれんは償却するため、原則として兆候がある場合に減損を検討します。 のれん、耐用年数を確定できない無形資産、未使用の無形資産は、兆候の有無にかかわらず毎期テストします。
減損損失の戻入れ 認められません。 減損の原因が解消・改善した場合に戻し入れます。ただし、のれんの減損は戻入れの対象外です。
Expert View

Tetsu先生の視点

「減損で最初に押さえるべきは『回収可能価額=使用価値と売却価値の高い方』という一文です。日本基準は割引前CFで一度ふるいにかける2段階、IFRSは割引後の回収可能価額と直接比べる1段階——このステップの違いが、減損の出やすさに影響します。さらにIFRSは(のれんを除き)戻入れができる。IFRS 3ののれんと合わせて学ぶと、買収会計の裏側まで見通せます。」

※ このセクションはReiwa Accountingの講師による独自の解説であり、公式機関の見解を示すものではありません。

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