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IFRS Comparison Guide

IFRSと日本基準の違い - 初学者向け比較ガイド

IFRSと日本基準は、どちらも投資家や利害関係者に有用な財務情報を提供するための会計基準ですが、背景にある考え方や具体的な会計処理には重要な違いがあります。本ページでは、初学者の方がまず押さえるべき代表的な論点を、実務での見え方も含めて丁寧に整理いたします。

Section 1

設計思想の違いとコンバージェンス(調和)の進捗状況

IFRSは、細かなルールを網羅するというよりも、財務諸表の目的や経済実態を重視する「原則主義」の色彩が強い会計基準です。企業は、取引の形式だけではなく、その取引が実質的にどのような権利・義務やリスクを生むのかを考え、基準の原則に沿って判断することが求められます。

日本基準も長年にわたりIFRSとのコンバージェンスを進めてきました。金融商品、収益認識、企業結合など、多くの領域で国際的な考え方が取り入れられています。一方で、のれんの償却、開発費、退職給付、OCIのリサイクリング、減損損失の戻入れ、再評価モデルなど、現在も重要な差異が残る分野があります。

学習上のポイント

基準差異を暗記するだけでなく、「なぜその処理になるのか」を設計思想から理解すると、個別論点がつながって見えるようになります。

Section 2

のれん (Goodwill) の取扱いの相違

のれんは、企業買収で支払った対価のうち、識別可能な純資産を超える部分です。IFRSと日本基準の違いが特にわかりやすく表れる代表論点です。

比較項目 日本基準:定期償却 IFRS:減損のみアプローチ
基本的な考え方 取得後、一定期間にわたり規則的に償却します。 規則的な償却は行わず、毎期および減損の兆候がある場合に減損テストを行います。
損益への影響 償却費が毎期発生するため、利益への影響が平準化されやすくなります。 通常時は償却費が発生しませんが、減損時には大きな損失が一括で計上される可能性があります。
主なメリット 処理が比較的わかりやすく、買収プレミアムの費用化が計画的に進みます。 買収後の収益力が維持されている場合、のれんを機械的に費用化しないため、経済実態を反映しやすい面があります。
主な留意点 償却期間の見積りにより利益水準が左右され、企業価値が維持されていても費用が発生します。 減損テストには将来キャッシュ・フローや割引率の見積りが必要で、判断の余地が大きくなります。
J-GAAP

定期償却の見方

日本基準では、のれんを原則として20年以内の効果が及ぶ期間で規則的に償却します。買収で発生した超過収益力を、時間の経過に応じて費用化する考え方です。

IFRS

減損のみアプローチの見方

IFRSでは、のれんを償却せず、回収可能価額が帳簿価額を下回った場合に減損損失を認識します。買収後の事業価値が維持されているかを毎期検証する点が重要です。

Section 3

リース (Lease) のオンバランス化

IFRS 16では、借手のリースについて、短期リースや少額資産リースなどの例外を除き、原則として使用権資産とリース負債を貸借対照表に認識します。これにより、従来オフバランスになりやすかった賃借取引も、資産の使用権と支払義務として財務諸表に表れます。

日本基準では従来、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区分し、オペレーティング・リースはオフバランスとする取扱いが中心でした。しかし、2024年に公表された新しい「リースに関する会計基準(企業会計基準第34号)」により、2027年4月1日以後に開始する事業年度から、借手のリースは短期リースや少額リースなどの例外を除き、原則として使用権資産とリース負債をオンバランスで認識することになります(2025年4月1日以後開始年度からの早期適用も可能)。これにより、日本基準もIFRS 16に大きく近づきます。

資産 使用権資産
負債 リース負債
損益 減価償却費・利息費用
Section 4

開発費 (Development Costs) の資産計上要件

日本基準では、研究開発費は原則として発生時に費用処理されます。これは、将来の収益獲得の不確実性が高く、資産として認識するための客観性を確保しにくいという考え方に基づいています。

IFRSでは、研究局面の支出は費用処理されますが、開発局面の支出については、技術的実現可能性、完成・使用・販売する意図、将来の経済的便益、必要な資源の利用可能性、信頼性ある測定などの要件を満たす場合に、無形資産として資産計上します。

日本基準

研究開発費は原則として発生時費用処理

IFRS

一定要件を満たす開発費は無形資産として資産計上

Section 5

OCI(その他の包括利益)のリサイクリング

その他の包括利益(OCI)に計上した評価差額などを、実現した時点で純損益へ振り替える処理を「リサイクリング(組替調整)」といいます。この扱いに、日本基準とIFRSで考え方の差があります。

日本基準では、OCIに計上した項目を実現時に純損益へ振り替える(リサイクリングする)のが基本で、純損益に振り替えないOCI項目は想定されていません。一方IFRSでは、項目ごとに振替の要否が定められ、確定給付制度の再測定や、FVOCIを選択した資本性金融商品の評価差額などは、純損益に振り替えない(ノンリサイクリングの)項目とされています。これらは実現しても純損益を経由せず、直接、利益剰余金へ振り替えられます。

日本基準

OCI項目は実現時に純損益へリサイクリング(純損益を重視)

IFRS

一部の項目はリサイクリング禁止。純損益を通さず利益剰余金へ振替

Section 6

有形固定資産の測定 — 原価モデルと再評価モデル

日本基準では、有形固定資産は取得原価を基礎とする「原価モデル」で測定します。帳簿価額は、取得原価から減価償却累計額と減損損失累計額を控除して求めるのが基本です。

IFRSでは、原価モデルに加えて「再評価モデル」を会計方針として選択できます。再評価モデルでは、資産を定期的に公正価値で評価し直し、評価が増加した部分は原則としてその他の包括利益(再評価剰余金)に計上します。ただし、実務上は原価モデルを採用するIFRS適用企業が多く、この点が直ちに大きな差異になるとは限りません。

日本基準

原価モデルのみ(取得原価を基礎に測定)

IFRS

原価モデルと再評価モデルを選択可(増加分は再評価剰余金へ)

Section 7

その他の重要な相違点

初学者の段階では、財務諸表に与える影響が大きく、実務でも確認頻度の高い論点から押さえることが大切です。

有形固定資産の耐用年数

日本基準では税法上の耐用年数を実務上の参考にする場面が多く見られます。一方、IFRSでは資産が経済的便益を生み出す期間を企業自身が見積もることが重視されます。そのため、同じ設備でも、事業計画や使用状況に応じて耐用年数が異なる場合があります。

退職給付

退職給付会計では、数理計算上の差異や過去勤務費用の扱いに違いが見られます。IFRSでは再測定をその他の包括利益に認識し、その後純損益へリサイクルしない考え方が特徴です。日本基準では、未認識項目を一定期間で費用処理する枠組みが用いられます。

減損損失の戻入れ

日本基準では、いったん計上した減損損失の戻入れは認められていません。一方IFRSでは、減損の原因となった状況が解消・改善した場合、過去に計上した減損損失を戻し入れます。ただし、のれんの減損は戻入れの対象外である点に注意が必要です。

Expert View

TETSU先生の視点

「IFRSと日本基準の違いを学ぶ際は、個別論点をバラバラに覚えるのではなく、『経済実態をどのように財務諸表へ表すか』という軸で整理することが大切です。特に、のれん、リース、開発費は、経営判断と会計処理が直結する論点です。ここを理解できると、決算書を見る目が一段深くなります。」

※ このセクションはReiwa Accountingの講師による独自の解説です。公式機関の見解とは異なる場合があります。

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