Reiwa Accounting School

世界で通用する、会計の品格へ。

Global Professional Education

IFRS 3 Standard

IFRS 3 企業結合とのれん
取得法による会計処理とのれんの算定

M&Aなどの企業結合をどう会計処理するのか。IFRS第3号の「取得法」と、その結果として計上される「のれん」の算定・事後測定を、日本基準との違いを交えて整理します。

Section 1

企業結合とIFRS 3の考え方(取得法)

企業結合とは、ある企業が他の事業や会社の支配を獲得する取引です。IFRS第3号は、企業結合を原則として「取得法(Acquisition Method)」で会計処理することを求めます。まず「取得企業」を識別し、取得日に、取得した識別可能な資産・負債を公正価値で測定します。

支払った対価が、受け入れた識別可能純資産の公正価値を上回る部分が「のれん」です。のれんは、買収先の超過収益力やシナジーなど、個別には識別できない価値を表すと考えられています。

Key Idea

取得法の出発点は「取得日の公正価値」です。帳簿価額ではなく、取得時点の時価で資産・負債を測り直す(PPA:取得原価配分)ことが、のれんの金額を左右します。

Section 2

のれんの算定(計算)

のれんは、次の式で算定します。非支配持分(NCI)や、段階取得で既に保有していた持分がある場合は、それらも取得日の公正価値で加味します。

移転した対価(取得の対価)+
非支配持分(NCI)の金額+
既に保有していた持分の公正価値+
取得した識別可能純資産(公正価値)−
のれん(Goodwill)= 差額

数値例(100%取得の場合)

A社がB社の株式を100%取得し、対価1,000を支払ったとします。B社の識別可能純資産の公正価値が800であれば、のれんは次のとおりです。

移転した対価1,000
非支配持分(100%取得のためゼロ)0
識別可能純資産(公正価値)(800)
のれん200
非支配持分(NCI)の2つの測定方法

100%未満の取得では、NCIを「公正価値で測定(全部のれん方式)」するか、「識別可能純資産の比例持分で測定(部分のれん方式)」するかを、取得ごとに選択できます。選択によって、のれんの計上額が変わります。

負ののれん(バーゲンパーチェス)

対価などの合計が識別可能純資産の公正価値を下回る場合は「負ののれん」が生じます。IFRSでは、測定に誤りがないかを再確認したうえで、取得日に利得として純損益に計上します。

Section 3

のれんの事後測定:償却せず、減損のみ

IFRSでは、のれんを規則的に償却しません。その代わり、毎期および減損の兆候がある場合に減損テストを行い、価値が損なわれていれば減損損失を認識します(詳しくはIAS 36のページで解説します)。

日本基準は、のれんを20年以内の期間で規則的に償却し、加えて減損も行います。買収後の収益力が維持されている場合、IFRSは機械的な費用化をしないため経済実態を反映しやすい一方、減損時には大きな損失が一括計上される可能性があります。

「償却しない」ことの意味

のれんを償却しないIFRSでは、買収の成否が「減損が出るかどうか」に集約されます。だからこそ、取得時の見積り(PPAや将来キャッシュ・フロー)と、その後のモニタリングが重要になります。

最新動向(2026年時点)

IASBは「企業結合—開示、のれん及び減損」プロジェクトで、のれんの会計を検討しています。償却の再導入は見送られ、減損のみモデルは維持される方向で、主に開示の充実が議論されています(最終的な決定は2026年後半に見込まれています)。

Section 4

日本基準(J-GAAP)との比較

企業結合とのれんは、IFRSと日本基準の違いが特にはっきり表れる領域です。主な相違点は以下のとおりです。

比較項目 日本基準(J-GAAP) IFRS(IFRS 3 / IAS 36)
のれんの事後測定 20年以内の効果の及ぶ期間で規則的に償却し、減損の兆候があれば減損も行います。 規則的な償却は行わず、毎期および減損の兆候がある場合に減損テストを行います(IAS 36)。
非支配持分(NCI)の測定 原則として、取得した識別可能純資産の公正価値のうちNCIの比例持分で測定します。 「公正価値(全部のれん)」と「識別可能純資産の比例持分(部分のれん)」を、取得ごとに選択できます。
負ののれん 発生した事業年度の利益(特別利益)として処理します。 測定の妥当性を再確認したうえで、取得日に利得(バーゲンパーチェス)として純損益に計上します。
取得関連コスト 取得原価に含める取扱いが中心です。 原則として発生時に費用処理します(取得原価に含めません)。
Expert View

Tetsu先生の視点

「のれんの会計は、M&Aの巧拙が数字に表れる場所です。IFRSは償却しない分、買収の成果を『減損が出るか否か』で厳しく問われます。取得時の公正価値評価(PPA)と、その後の減損テストはワンセット。IFRS 3とIAS 36を一緒に学ぶと、買収会計の全体像がつながって見えてきます。」

※ このセクションはReiwa Accountingの講師による独自の解説であり、公式機関の見解を示すものではありません。

ACCAのすべてが分かるセミナーの参加はこちら